Le  temps  d’or 


朝晩、土佐山でストーブを焚く日も多くなってきたね、と思っていたら、

季節はそれを通り越して、どんどん過ぎていき、クリスマスも終わってしまい、

もう今日は大晦日。

年末年始、東京でいつもどおり家族と過ごしております。


2020年の私の1年の一番大切な仕事、

エコール クレーム・エ・メティエの3カ月のレッスンは、

4月からの3カ月の予定です。

またみんなでお菓子を作って販売しますので、

どうぞよろしくお願いいたします。



2019年を振り返ると、お菓子のレッスンを通して、

たくさんの方とお会いすることができた1年でした。

レッスンに来てくださった方々と、一緒にお菓子を作っていると、

ごくごくたまに、楽しいというのとはまた少し別な、

ああ、今のこの瞬間がずっと続いたらいいな...

なんて、ちょっと願っちゃうような、

そんな瞬間が、不意にやって来ることがあって。

その瞬間を、勝手に、Le temps d'or、黄金色の時間と名付けてみました。


独りで作っているときではなく、

誰かと一緒に作っているとき、

1年に1回、あるかないか、あったとしても

仕事中なので、そんなに浸ってられるわけもなく、

誰に気づかれないまま、作業を続けながら、

そのまま過ぎていってしまうのですが…


思いおこせば、1回目の黄金の時間を感じたのは、

10歳くらいのとき、共働きで日々忙しかった母親が、一度だけ、

ふたりでプリンを作ったことがあります。

卵液を入れた白いコーヒーカップ、

カタカタと、音を立てている蒸器のアルミの四角い蓋、

自分がしていたエプロンの柄、夕暮れの薄暗いキッンの壁の色。

普段は忙しくて、ほとんど一緒にいられなかった母との時間が、

このままずっと続いてほしい、

それが無理なのは、もうわかっていたので、

せめて今この瞬間を忘れないようにするんだと、

自分に自分で言い聞かせていたような…

あれからもう半世紀近く経って、

母も、この世界には、もういなくなってしまったけれど、

今でも、なにかの拍子に、あのときの楽しいけど、

ちょっと切羽詰まってるみたいな気持ちだった私、

プリンができるのを待っているけど、

ずっとこのまま、こうして蒸し器の音を聞いていたいような、

10歳の私。


お菓子作りって一人遊び的な要素がとても強いと思うのですが、

最初は、きっと誰かと一緒にお菓子を作ったんじゃないかと思います。

その手でひとつひとつ行程を重ねて、お菓子が生まれていく時間。

これからも、大事にしていけたら、と思います。


今年もみなさま、土佐山やそのほかの場所で

クレーム・エ・メティエのレッスンや販売に

お出向きくださいまして、本当にありがとうございました。


2020年もたくさんのよい時間と、美味しいお菓子を、

ご一緒に味わえますように。


よいお年を。

Bonne année et  Votre santé !



エコール クレーム・エ・メティエ  加藤みどり

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